3年ぶりに取材したテニスの4大大会、ウィンブルドン選手権(6月30日~7月13日)で、前回と明らかに変わったことがある。
記者会見で、ロシアによるウクライナ侵攻についての話題がほとんど聞かれなくなった。
大会中、顔なじみの外国の記者たちとプレスルームで雑談していて、関心は低くなっていることが肌感覚でわかった。
ロシアのプーチン大統領の命令による蛮行のスタートから半年も経っていなかった2022年大会は、違った。「戦争」がメインテーマだった。
主催するオールイングランド・クラブはロシアと、協力国ベラルーシの選手に対し、「選手の活躍がプロパガンダに使われるリスクがある」として参加を禁じた。
テニスのプロツアーは22年2月の侵攻開始後も、両国の選手が国名や国旗を使用することは禁じつつ、個人としての出場を認めていた。そうした状況下での異例な判断と言えた。
当時、ウクライナがロシアからの爆撃を受け、多くの市民が犠牲になる光景が連日、ニュース映像で流れていた。国際世論の関心は高かった。
とくに開催国である英国の反ロシア感情は強く、公共放送BBCをはじめ、メディアも連日、ウクライナ情勢について、多くの時間を割いて報じていた。
テニス界でも同じだった。
女子シングルスでウクライナ出身のアンヘリナ・カリニナは2回戦進出を決めたとき、大きな記者会見場に呼ばれた。世界ランキング30位台の選手が、優勝候補を破る番狂わせを起こしたわけでもないに呼ばれるのはめずらしいケースだった。
報道陣の関心は、母国の現状…